
深圳前海管理局は2025年7月3日、深圳・香港間の「データ越境安全便利チャネル」が初の試験伝送に成功したと発表しました。7月1日、香港大学深圳医院のデータが香港の医療情報システム「医健通」へ送られました。医療分野を皮切りに、大湾区のデータ流通の仕組みづくりが進んでいます。
概要
深圳市前海管理局は2025年7月3日、深圳と香港を結ぶ「深港データ越境安全便利チャネル」(深港数据跨境安全便捷通道)が初めての試験に合格したと発表しました。7月1日、香港大学深圳医院が初の試験を行い、同院のデータがこのチャネルを通じて香港の電子健康記録システム「医健通(eHealth)」へ円滑に伝送されました。発表では、深圳と香港のデータ相互接続が技術面で新たな進展を遂げたものと位置づけられ、両地のルールの接続、要素の越境流動、医療体制の融合を支えるものとされています。
背景
粤港澳大湾区(グレーターベイエリア)では、香港住民が深圳など本土側の医療機関を受診するケースが増えています。香港特別行政区政府は「高齢者医療バウチャー大湾区試行計画」や「大湾区における病院管理局患者支援先行計画」などの施策を打ち出しており、越境医療の利便性向上が課題となってきました。これまでは香港住民が「医健通」を通じて自身の健康データを本土側で活用する「北上」が中心でしたが、今回のテストは本土側の医療データを香港へ送る「南下」の実現を目指すものです。
データの越境移転については、国家のデータ越境安全管理制度の枠組みに加え、深圳・香港・広東の間で交わされた「粤港澳大湾区のデータ越境流動の促進に関する協力覚書」に基づく措置が整備されつつあります。前海は「前海深港現代サービス業協力区」として、こうした制度革新の先行地域に位置づけられています。
主なポイント
- インフラ:チャネルは「国家(深圳・前海)新型インターネット交換センター」の深港データ専用線をベースに構築されています。
- 技術:ブロックチェーンやプライバシー計算などの技術を用い、データ越境流動の全工程を管理・サービスする仕組みを構築。エンドツーエンドの伝送について、合規性・制御可能性・リスクの可視化・追跡可能性を確保し、個人のプライバシーデータを強化レベルで保護するとしています。
- 関係機関:深圳市インターネット情報弁公室、深圳市前海管理局、深圳市人民政府港澳事務弁公室、深圳市衛生健康委員会、香港の医務衛生局およびデジタル政策弁公室が推進に参加しました。
- 想定される用途:両地の法規に適合することを前提に、電子カルテや検査報告などを安全・合規・便利・信頼できる形で相互にやり取りする実践方案を協議・研究するとしています。病院側は、将来的に患者が深圳で検査を受け、香港で再診する際に結果を即時に確認できる形を想定していると説明しています。
なお、発表では伝送データ量や所要時間などの具体的な数値は示されていません。参加機関の顔ぶれからは、ネット情報、港澳事務、衛生健康など複数の部門と香港側の機関が連携して進める取り組みであることがうかがえます。
日本・深圳の交流への意味
深圳・香港間のデータ流通の仕組みは、現時点では医療分野が先行していますが、制度や技術の基盤が整えば、他の分野にも応用が広がる可能性があるとみられます。大湾区で事業を展開する日系企業の中には、香港に地域統括拠点を置き、深圳に生産・開発拠点を持つ企業も少なくありません。データの越境移転に関する手続きや合規の在り方は、こうした企業の実務にも関わるテーマとして注目が集まっています。
また、医療・ヘルスケア分野は、日本の医療機器メーカーやデジタルヘルス企業にとっても関心の高い領域です。深圳・香港で進む実証の動きは、データ活用をめぐる規則づくりの方向性を把握するうえで参考になるとみられます。
今後の見通し
前海では7月7日、深港データセンターや「前海医療越境データ空間」、企業の海外展開に向けたデータ越境合規サービスプラットフォームなど3つの製品が発表され、データ越境の取り組みはさらに具体化しています。一方、電子カルテなどの相互伝送をいつ、どの範囲で本格実施するかについては、両地で引き続き協議・研究するとされており、具体的な時期は示されていません。
促進会より
当会は、前海をはじめとする深圳の制度改革や大湾区の連携の動きを引き続き注視してまいります。日本の企業・関係者の皆様に向けて、深圳の最新動向に関する情報提供と交流の場づくりに努めてまいります。
本記事は公開情報をもとに作成した参考情報です。内容の正確性・完全性を保証するものではありません。

